脱抑制
おかしいなと感じたら、まず最寄りの医療機関へいってみましょう。
抑制とは「抑えて止める」ことです。その働きが外れてしまうことを「脱抑制」といいます。
脱抑制という言葉は、細胞レベルの働きから脳の機能、そして特徴のある行動のことまで、さまざまな局面で使われますが、ここでは認知症に関連のある、行動の特徴としての脱抑制について説明します。
普段私たちは、意識的にあるいは無意識のうちに「今ここでこれをしてしまったら良くない」と判断して、自分のことを抑えるようなコントロールをしています。
これに対して脱抑制とは、善悪の判断や自分をコントロールすることができなくなってしまった状態のことをいいます。注意したいのは、意識的に「これぐらいならしてもいいだろう」と考えてしているわけではない、ということです。言葉は難しいですが、身近な例では、アルコールを飲んで気持ちを抑えられなくなった時の様子を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。 例えば
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マナーや礼儀、作法がなくなる
今までしていたような挨拶をしなくなったり、人の目を気にしないような行動をする -
性的な言動
いきなり女性の胸やお尻を触ったりする
などということがあります。
このほか、例えば「目の前に欲しいものがあったから、持ってきてしまった」という行動が、結果として万引きになってしまうケースもあります。
「脱抑制」という言葉は普段耳にする機会はほとんどないと思います。しかし、実際には身近なところで目にしているものです。例えば深酒をしてしまった人が、普段は敬語で話している上司に向ってぞんざいな話し方をしたり、道端で見知らぬ人にからんだり。かくいう私も若気の至りで飲み過ぎて、脱抑制の状態で失敗したことがあります。
さて、脱抑制による行動は、悪気があって(意識的に)していることではありません。このような状態にある認知症の方を責めたり、声を荒げて感情をぶつけてしまうと、それが更に刺激となって状況がどんどん悪くなってしまいます。また、普段人は様々な状況において、自分をコントロールすることで社会生活を円滑にしています。そのため、脱抑制がおきると、ともすると人間関係を悪くしてしまいがちです。しかし本人は、それを決して望んではいないでしょう。(HR)