成年後見制度とは?
適切な行政サービスを受けたり、悪質な業者から身を守るために!
最近、認知症のために判断能力が低下した高齢者に、次から次へと必要のない住宅リフォーム契約を結ばせる悪質な事例が多発しており、被害防止の観点から「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」が注目を浴びています。まだ制度をご存知でない方も、この機会に制度への理解を深めてください。
成年後見制度ってどんな制度?
成年後見制度は精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)により、判断能力が十分でない方が不利益を被らないように家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。
不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。
また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります(例えば一人暮らしの老人が悪質な訪問販売員に騙されて高額な商品を買わされてしまったといった事件など)。
このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。
また、成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つに分けられます。
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任意後見制度
判断能力が衰える前に使うことができる制度。将来のために自分を援助してくれる人や、援助してくれる内容をあらかじめ決めておくことができます。
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法定後見制度
判断能力が衰えた後に使うことができる制度。法定後見制度は既に精神上の障害がある場合に利用できます。法定後見制度は、障害の程度によって後見・保佐・補助の3つに分かれます。簡単に言うと、それぞれ精神上の障害(知的障害、精神障害、痴呆など)のため、
- 後見 ほとんど判断出来ない人。大体、常に自分で判断して法律行為をすることはできないという状態。
- 補佐 判断能力が著しく不十分な人。簡単なことであれば自分で判断できるが、法律で定められた重要事項については誰かに助けてもらわないとできないという状態。
- 補助 判断能力が不十分な人。たいていのことは自分で判断できるが、難しい事項については助けてもらわないとできないという状態。
成年後見制度のメリットは?デメリットは?
- 判断能力が低下した人の財産管理と身上看護をすることができる
- その内容が登記されるので成年後見人等の地位が公的に照明される
- 成年後見人等には取消権があるので本人が詐欺に遭っても契約を取り消せる
- 選挙権を失う ※補佐と補助は除く
- 会社の取締役や弁護士・医師等の一定の資格に就くことができない ※補助は除く
- 手続きに時間がかかるため迅速性に欠ける
成年後見制度を利用できるのはどんなとき?
成年後見制度を利用するには一定の要件を満たす必要があります。また、成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度の2つに分けられます。どういう時にどの制度を選択するのかについては医師等の鑑定も必要な場合もあるので判断が難しいのですが、ここでは簡単な事例を挙げてどの制度を選択できるのかを見ていきましょう (なお、財産管理委任契約は成年後見制度ではありません。詳しくはこちら)。
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年金生活の一人暮らしのおばあちゃんが訪問販売で必要もない高額な商品を買ってしまう
任意後見制度もしくは法定後見制度 -
夫に先立たれてしまい一人で過ごす老後が不安・・・夫が残してくれたマンションの経営や、将来お世話になるかもしれない老人ホームの入所手続を代わりにやってもらいたい
任意後見制度もしくは財産管理委任契約 -
兄が認知症の母と同居しているが、どうやら兄が勝手に母のお金を使っているらしい
法定後見制度 -
うちの一人息子は生まれたときから重度の知的障害者で、私たち両親が亡くなった後のことが心配だ
法定後見制度 -
高齢のため体が不自由で要介護認定を受けているが、特に認知症ではない。出歩くのも大変なため預金の管理等が困難なので代わりにお金の管理をしてくれる人が欲しい
財産管理委任契約 -
最近、物忘れが激しくアルツハイマーの疑いがあり、一人暮らしのため老後がとても不安だ
任意後見制度もしくは法定後見制度 -
寝たきりの祖母からお金の管理を頼まれたため、きちんと祖母のお金の管理をしているにもかかわらず、叔父や叔母からなにかと疑われてしまう
法定後見制度 -
認知症の母の不動産を売却して老人ホームの入所費用にあてたい
法定後見制度
※成年後見制度を利用しても日用品の購入やその他日常生活に関する行為は、本人が単独で行うことができます
※居住用の不動産を売ったり貸したりするには、家庭裁判所の許可が必要です
成年後見制度を利用したい。具体的な手続は?期間は?
成年後見制度を利用するには本人の住所地の家庭裁判所に申し立てをする必要があります。また、申立てから開始まで、審理期間については、個々の事案により異なり、一概にはいえません。鑑定手続や成年後見人等の候補者の適格性の調査、本人の陳述聴取などのために、一定の審理期間を要することになります。多くの場合、申立てから成年後見等の開始までの期間は、4か月以内となっています。
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任意後見制度のご利用をお考えの方へ
法定後見制度を利用するには、本人の住所地の家庭裁判所(※1)に後見開始の審判等を申し立てる必要があります。手続の詳細については、申立てをされる家庭裁判所にお問い合わせください(※2)。
※1 本人の住所地の家庭裁判所については、裁判所のホームページに掲載されている「各地の裁判所」 をご覧ください。
※2 後見開始の審判の申立て等に関する具体的な手続については、裁判所のホームページに掲載されている「裁判手続の案内:家事事件」 などをご覧ください。 -
任意後見制度のご利用をお考えの方へ
任意後見制度を利用するには、原則として、公証役場に出かけて任意後見契約を結ぶ必要がありますので、手続の詳細については、お近くの公証役場(※3)までお問い合わせください。
※3 お近くの公証役場については、日本公証人連合会のホームページに掲載されている「全国公証役場所在地等一覧表」 をご覧ください。ホームページには、任意後見契約についてのQ&Aのコーナー がありますので、併せてご覧ください。